サプリメント無用。健康な食事法とは?

  テレビや雑誌では、健康の為に様々なサプリメントが紹介されたり、また、何とかを食べれば健康になるとか、病気が治る等の情報が沢山溢れています。生命科学的に、どのように栄養の問題を整理して考えたら良いのか、簡潔に述べたいと思います。
栄養の問題は、詳しく書きますと、一冊の本でも足りないテーマだと思いますので、今回はあくまで基本的な考え方を書きたいと思っています。

 
<栄養はバランスと量>

第一に、大切な事は、人体が必要とする栄養素をバランス良く含んでいる事。人体が必要とする基本的な栄養素には、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル等が 有ります。タンパク質は、20種類のアミノ酸を、数珠繋ぎにして作られています。20種類のアミノ酸の内で、9種類は、必須アミノ酸と言われるもので、体 内で作る事が出来ないアミノ酸です。
必 須アミノ酸が一つでも不足すると、体に必要なタンパク質を作る事が出来ません。この事は必須アミノ酸の一つが、必要量の半分しか無ければ他のアミノ酸が十 分な量があっても、半分しかタンパク質を作る事が出来ない事を意味します。この、必須アミノ酸をバランスよく含むタンパク質が良いタンパク質と言えるもの です。食品で言えば、肉、魚、牛乳、卵等、動物性食品です。
植物性食品で必須アミノ酸をバランス良く含んでいる物は、畑の肉と呼ばれる大豆ぐらいの物です。白米の場合リジンと言うアミノ酸が不足していますし、その他の植物性食品で、必須アミノ酸のバランスを良く含んでいる物はありません。
 
脂質は、体内で合成出来ない必須脂肪酸として、ω3系脂肪酸のDHAやEPAを作るαリノレン酸、ω6系脂肪酸のアラキドン酸に変化出来るリノール酸があります。ω3系脂肪酸は、葉や葉野菜、魚の油。ω6系脂肪酸は穀物に多く含まれ、大豆油、ごま油、菜種油、穀物飼料で育てられた家畜に、それぞれ多く含まれています。これらを、バランス良く摂取する事が大事です。
ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンC、ビタミンB群(チアミン、リボフラビン、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビオチン、ビタミンB12、葉酸)、等が有りますが、これらを、バランス良く摂取する事が大事です。
ミネラルは、ナトリウム、カリウム、リン、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、ケイ素、マンガン、銅、アルミニウム、ストロンチウム、ホウ素、バリウム、チタン、鉛、バナジウム、ニッケル、等が有ります。これらを、バランス良く摂取する事が大事です。
ここまで、バランス、バランスと何度も繰り返しましたが、生命体にとって必要な栄養は一つや二つではありません。全ての栄養素のバランスこそが、生命体が正 常に力強く働く為に不可欠なのです。細胞の中で行われている化学反応は非常に複雑で、細胞内には、約80億個のタンパク質が存在していると考えられていま す。その内、数十億個が、化学反応を触媒する酵素タンパク質と考えられます。この酵素タンパク等が相互作用しながら、外界とも様々な反応を繰り返し、複雑 な化学反応を行っています。この事が、生きていると言う状態を作り出している生命の代謝の実態です。
こ の複雑な代謝に必要な栄養素は、多岐に渡り、多くの種類の栄養素がバランス良く入ってこなければ上手く働く事は出来ません。ある一つの栄養素だけが突出し て増えた場合、栄養素の全体としてのバランスが崩れる為に、ほとんどの場合に体は異常を起こして来ます。タンパク質を構成するアミノ酸も、一つのアミノ酸 だけが多くても、体のタンパク質合成には役に立たずに、分解されてエネルギーとして利用されるに過ぎません。
また、ある種のアミノ酸だけが突出して増えた場合には人体に有害な事も最近の研究では指摘されて来ています。ビタミンの場合には、大きく二つに分かれていて、脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、)、水溶性ビタミンのビタミンB群、ビタミンC、が有ります。水溶性ビタミンは、多く摂取しても過剰な部分は尿に捨てられますので、過剰症は起きにくいものです。
しかし、脂溶性ビタミンの場合には、細胞の膜が、元々リン脂質と言う、脂質の膜で出来ていますので、細胞内に取り込まれやすく必要以上に入ってきた場合に、ビタミン過剰症による病的症状が起きてきます。ビタミンAの場合には、脱毛、皮膚や眼球乾燥、肝脾腫大等、ビタミンDの 場合には、高カルシウム血症、石灰沈着、食欲不振等、が起きます。生体微量元素である、ミネラルの場合には、必要量と過剰量との幅が狭い為に過剰な摂取 は、生体に危険を及ぼしてしまいます。しかし、一般的に、自然な食物の場合には、大多数の食物が、様々な栄養素をある程度のバランスで含んでいる為に、自 然なものは何を食べても過剰症が起こる事は滅多に有りません。

<サプリメントの多くはアンバランスな食品>

しかし、サプリメント等の健康食品を摂取している場合は、その限りでは有りません。これらの食品は、殆どがエキス剤に成って居る為にある種のアミノ酸だけと か、ある種のビタミンだけとか、鉄やカルシウムやマグネシウム等のある種のミネラルだけ等、非常にアンバランスな食物に成って居る事が多いのです。尚且 つ、一つの栄養素だけが、極端に多くなっていますから過剰症になる危険性も出て来ます。
その意味では、ある種の栄養素だけが、極端に不足している場合に、その栄養素を的確に補給できると言う条件での、サプリメントの利用は、理に適っているかも しれません。しかし、この様な事は、滅多に起こる事はありません。多くの栄養不足は、一つの栄養素だけが不足する事は少なく、全体的に不足して居る事の方 が圧倒的に多いのです。
タ ンパク質を構成する、アミノ酸にしても、特定のアミノ酸だけを、サプリメントで摂るよりは、必須アミノ酸をバランス良く含んだ肉、魚、卵等の動物性食品を 摂取した方が、必須アミノ酸に留まらず、ビタミン、ミネラル等、体に必要な栄養素を総合的に摂る事が出来ます。骨が弱くて、カルシウムをサプリメントで、 摂るよりも、カルシウムを多く含んだ自然の食品を摂る方が合理的です。
骨を丈夫にするのに必要な栄養素は、カルシウムだけでは有りません。カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、マンガン、ビタミンD、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンB、ビタミンK、コラーゲンを作るタンパク質等が必要です。
こ れらの栄養素は、カルシウムを多く含む自然の食品を摂った場合には、すべて摂る事が出来ます。食物としては、緑の濃い緑黄色野菜、豆類、海藻類、小魚、乳 製品等です。鉄欠乏性貧血等と言われた場合でも、通常の食生活をしている場合には鉄だけが特に不足する事はあり得ません。鉄不足になる様な食事に陥ってい る時には、鉄以外のミネラル全般が不足して居る可能性が高いのです。
 
<サプリメントの害は?>

最近は、サプリメントだけではなく、乳飲料に鉄を添加した物も売られて居ます。しかし、鉄だけを多く摂りすぎますと体で使い切れない鉄は、活性酸素を作り出す反応を促進させますので、肝臓やすい臓に障害を与えて、肝硬変や糖尿病を悪化させます。
ま た、細胞内には様々な酵素タンパク質が働いて居ます。酵素タンパク質の活性中心では、ミネラルが重要な働きをしています。酵素によっては、亜鉛を活性中心 に持つ、亜鉛酵素タンパク質や銅を持つ酵素タンパク質、鉄を活性中心に持つ鉄酵素タンパク質等、有ります。しかし、亜鉛や銅が少なくて鉄だけが過剰になり ますと、本来亜鉛が入るべき亜鉛酵素の活性中心に鉄が間違って入ってしまい細胞内で異常な反応を起こして、細胞の代謝異常を起こす事も有ります。
鉄 の場合にも、一つの栄養素だけが、過剰になる事は、健康になるどころか、病気に成る可能性があるのです。ミネラル不足を補う場合にも、サプリメントに頼る のではなく、ミネラルが多く含まれている自然の食品から摂るようにして、全てのミネラルを、バランス良く摂取する事が大事です。
 
*バランスの良い食べ物って、何ですか?*
食べ物は、生物によってそれぞれ違います。草食動物は、草を主に食べますし、肉食動物は主に肉を食べます。昆虫は木の樹液を吸うものもあれば、植物の葉を食べるもの、また、他の昆虫を食べるもの等様々な食性があります。
こ れら、それぞれの生物は、身近に手に入る食べ物に、体の代謝を合わせて、生命を維持し子孫を残せるように何百万年を掛けて進化して来ました。その為に、生 物にはそれぞれの、特有の食性があり、その食性に合った食物を摂取した時に、最も健康に成るように、基本的に作られています。しかし現在の栄養学は、マウ スやラットの実験や、試験管での実験で得られたものが多く、実際の人体における栄養学としては疑問を呈するものが少なくありません。
まず、第一に、人間とマウスやラットでは食性も代謝も、同じではありません。第二に、試験管の中での単体の細胞の働きと、60兆個の細胞が複雑な社会を作り、相互作用しながら生きている人体内部での細胞の働きとは、大きく異なるものです。
で すから、同じ栄養素を加えても、試験管内の細胞と人体内部の細胞では、全く別な作用が出る事もあるのです。その意味から、人間のための栄養学は、人体実験 が最も正しい結果を出せる方法と言えるかもしれません。しかし、人体実験は、人の寿命が長い事や被験者に障害が出る可能性も有る為に、時間的にも倫理的に も無理があります。
人間の為の栄養学は、必ずしも科学的実験に依らなくても、作る事が出来ない事ではありません。
一 つには、生物は、数百万年と言う長い年月を掛けて食べてきた物に合わせて体の代謝を進化させて来ました。人間に於いては、人類が、霊長類として進化してき た約600万年の間、どのような物を食べて来たのかを知る事です。二つには、人体実験の代わりに、百歳を超えて生きた人達がどの様な食べ物を食べて来たか を知る事です。この二つを研究する事が、人間の為の栄養学を作る為に、最も大事な基本となる事です。
 
<この二つから得られる人間の為の栄養学と、そのバランスとは?>
人類が600万年に渡る進化の過程で食べて来たもの、特にホモサピエンスとなって20万年の間は、研究者によると狩猟採集で得られる物で、かなりの雑食であった事が分っています。
肉、 魚、昆虫、ナッツ類、ベリー類、貝類、植物の根や葉等で、この狩猟採取生活で摂取していた食べ物の栄養のバランスが人間にとって必要な栄養のバランスであ る可能性が高いのです。現在のように、コメや小麦を主体にした炭水化物中心のものでは無かったのです。お米や小麦が主体となったのは、約1万年前に農耕生 活が始まってからで、この長い雑食生活から、お米や小麦主体の生活への転換は、人類の健康にとっては良いものではありませんでした。
研 究者によると、食事のバランスに於ける、デンプン等糖質の割合が増えタンパク質、ビタミン、ミネラル等の摂取が減じた為に、農耕生活後の人類は体も小さく なり、カルシュウム不足から骨も弱くなり様々な病気にも掛かり易くなった事が分っています。その意味から言える事は、人間が摂るべき栄養のバランスとは、 人類が農耕生活を始める以前の、長きに渡って狩猟採集生活を行っていた頃の栄養のバランスと言えそうです。ちなみに、狩猟採集生活の頃の栄養のバランス は、タンパク質30%、脂肪35%、糖質35%、であった事が研究により明らかにされています。
 
も う一つ、栄養のバランスを考えるうえで、考慮すべき一番大事な要素が、100歳を超えて生きた人たちの、栄養のバランスです。実は、この事実から得られる ことが、最も大事な事かもしれません。人間の生きられる限界である、最長寿命は120歳と言われていますが、100歳以上の長寿者は、そう多くはいませ ん。ほとんどの人は、90歳から100歳まで生きられれば十分、と思っているのではないでしょうか。その意味では、100歳長寿者の摂ってきた食事の栄養 バランスこそ、我々が求める栄養のバランスと言えるかもしれません。
基 本的な事実として、人間が進化の過程で雑食をしてきたと言う事は、栄養のバランスを考慮して、やってきた訳では有りません。狩猟採集生活で、食料は、いつ でもそう簡単に手に入る訳ではなく、人類は飢餓状態の方が多かったようです。その為、身近に手に入る、様々な食物を食べて来た訳ですが、いつも充分な獲物 を得られる訳ではありませんから、肉しか取れないときは肉だけ、魚しか取れないときには魚だけ、虫しか取れないときには虫だけ、植物しか取れないときには 植物だけ、と言う様なことも、多々あったと考えられます。それでも、人類がこれだけ世界中に繁栄出来て居るのは、雑食で食性の幅が広い為に、他の動物と比 べて何を食べても何とか健康に生きていける、消化、吸収、代謝に柔軟性と適応力を進化の過程で身に着けたからにほかなりません。
人間の為の栄養学は、これらの事を十分に考慮して作られなければなりません、決して、マウスと試験管の実験が中心ではありません。これらの事から、私の考える健康の為のバランスの良い食事とは、人間は、基本的に雑食性の生き物で すから、一つの食品に偏らず、出来るだけ多品種の食品を摂る。食事量は、多過ぎず、少な過ぎずと言う事が良いと考えられます。ただ、健康の為には、運動も 不可欠な事ですので、健康の為には、食事のバランスだけではなく運動も重要な要素として行っていかなくてはなりません。
さ て、具体的に100歳老人の食事を見てみますと、特別な食事をしている人はあまり居ません。少なくとも、日本人の100歳老人の食事は、ご飯とみそ汁、肉 や魚、数種類の野菜等と、至ってシンプルなもので一般の日本人が食べている食事と変わりありません。テレビや雑誌で食事療法を指導している先生の中には、 ゴボウや納豆やゴマ等、特定の食品を推奨して放送翌日には日本中のスーパーからゴボウ等が無くなってしまうという現象が起きています。残念ながら、一つの 食品で、必要な栄養素をバランス良く含む物は、ありません。栄養のバランスは、様々な食べ物を摂取する事により、初めて得られる物で、決して特定の一つの 食品で得られる事では無いのです。一つよりは二つ、二つよりは三つの方が栄養のバランスは良くなるのです。
何 を食べるかを考える場合には、人体に備わった様々な食物に対する消化吸収に於ける適応力と、また、栄養素の過不足が有った場合に、ある栄養素が過剰の場合 には、吸収を抑えたり、排出を促進します。逆に少ない時には、吸収率を上げたり、排泄を抑制したりする働きも有りますし、体内でも、代謝を調整して、栄養 に対する恒常性維持をしている働き等も考慮すれば、厳密に特定の食品を決めて、摂取する必要はありません。

<結論>

結論として、食事に関しては、人体の栄養素の過不足に対する、柔軟な適応力もある事から、厳密に特定の食べ物を食べなければならないと神経質に考える必要はありません。
あ る程度のバランスでバラエティに富んだ食事を摂る事、また食事量は、多過ぎず少なすぎず腹八分に摂ることが大切であると、人間に於ける進化の歴史と100 歳老人の食事が我々に教えてくれている事です。ただし、健康の為にとなりますと、くれぐれも、栄養のバランスだけで得られる物でもなく、同時に体の機能を 使う運動も不可欠な事を、お忘れなく。


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