うつ病は必ずなおる!

 うつ病と言っても症状や原因によって様々な物があり、一言で言い尽せる物でもありませんが、大きく分けると躁うつ病と、抑うつ症状だけが続くうつ病に分けられます。躁うつ病の場合には、ストレスによって誘発される事も有りますが、基本的には精神的ストレスによるものは少数です。殆どが脳神経細胞の器質レベルの異常が有る為に、神経細胞が異常に興奮状態の時には躁状態、異常に抑制状態の時にはうつ状態になります。

 躁うつ病はこのように、細胞レベルの異常が強く影響していますから、精神的ストレスを無くしても影響は大きくは有りません、この場合には薬による治療を主体に病気をコントロールして行く事が必要です。

 

病的と言えないうつ状態

 

 精神的ストレスが続いて発症して来るうつ病の場合には、病的なものと、一般的な生活上の悩み事から気分が落ち込んだり塞ぎ込んだりしているうつ状態とは、区別して考えなければならないものと私は考えています。生活上のストレスで気分が落ち込んで、うつ状態にあるものをうつ病とするならば、殆どの人は生活上の問題が起きるたびにうつ病と言う病名を付けられて、精神科に通い薬を飲まされる事になってしまいます。

 

 私は、この様な状態がどんなに長く続いていても、うつ病と診断する事は正しくないと考えています。精神科の治療を要するうつ病と、誰にでも起こりうる、ただ単に悩みやプレッシャーから気分が落ち込んでいるうつ状態とは質的な違いが有る事は確かです。通常のうつ状態とは、生きていく為の仕事上のプレッシャーや自分を取り巻く人間関係が上手く行かない等のストレスや、病気や体調が悪い等の、はっきりした原因が有って気分が落ち込んでいるものです。この様な場合は、仕事が上手く行ったり、人間関係が上手く行ったり、病気や体調が良くなれば速やかに気分も良くなり、うつ状態も速やかに良くなります。

 

 この様なうつ状態は、精神の病的状態と捉える事では無く、薬を処方すべきものではありません。例えうつ状態がどんなに長引いていたとしても、ストレスとなる問題が解決する事で速やかに良くなるうつ状態に対しては、ストレスを解消させる事のみが唯一の治療法です。何故ならば、神経を興奮させる薬にも、抑制する薬にも、脳神経の複雑なネットワークと、100種類を超す神経伝達物質によって作られる心を、上手くコントロール出来るものはありません。むしろ、脳神経のバランス良い働きを失わせる副作用もあり、問題解決はしてくれないからです。

 

 この場合、処方すべきなのは薬ではなく、自分に降り掛かっている問題を解決する方法であり、様々な人生に於ける問題を乗り越えていく力を身に着ける為の、自分自身の心の成長を促す、生き方考え方のレベルアップの為の変革です。人間にとって、人生に於ける様々な悩みや苦しみによって落ち込むことは、必ずしも悪い事ばかりではありません。人間性の成長にとって悩みや苦しみは、むしろ必要な事でもあるのです。人は自分自身悩んだり苦しんだりした経験がなければ、他人の痛みを理解する事が出来ません。人間的な成長とやさしさは、この他人の痛みを理解してあげられる事から始まります。

 

 また、自分の周りに起きてくる様々な問題は、自分の周りに対する配慮の至らなさであったり、自分の力不足が原因となって起きてくる事が少なくありません。その様な意味では、様々な問題で悩み、それを乗り越えられた時には、自分自身の人生は、自分自身の努力で乗り越えられるものであり、自身の行動次第で自分の人生の主体者になり、コントロール可能なものであると悟る事が出来ます。その事が深く理解出来れば、その後の人生に自信をもって生きて行く事が出来る様になります。

 

 また、悩みや苦しみを自身の人間的な成長の糧として乗り越えた時には、大きな達成感と共に、自分自身の成長感にもつながり、過去の悩みや苦しみさえも、その人にとって悪い思い出では無く、自分を成長させてくれた良い思い出として心に刻まれていきます。

 

 また、日々の暮らしが順調にいっている時でも、人間には欲望が尽きる事がありませんから、不平不満が起きる事もあります。その様な時でも、悩みや苦しみが時々ある事で、日々順調に暮らせる事だけでも如何に有難い事かと、感謝の気持ちを持つ事が出来るようになり、何事の無い人生よりもはるかに味わい深い、感謝の人生を送る事が出来るものです。その様な意味では、うつ状態で悩む事は、人の精神的成長に欠かせないものとも言えるのではないでしょうか。

 

本当のうつ病とは?

 

 病的なうつ病とは、一般的なうつ状態が長期に続いたり、うつ状態に至るストレスが強すぎた場合に、通常のうつ状態のレベルを超えて起きてくる病態です。

 

 脳の神経科学的に言いますと、脳で情動を作り出しているのは大脳辺縁系と呼ばれる部分ですが、その中でも、特に扁桃体と言う神経核が不安感を生じさせる中心的働きをしています。人は日々、様々な出来事の中で暮らしています。その出来事や様々に認知されるものが、自分にとってプラスかマイナスか、好きか嫌いか、危険か危険ではないか等の価値や、影響を瞬時に判断して、価値判断と情動を作り出しているのが脳神経の海馬の先端にある扁桃体と言う部分です。

 

 扁桃体では、遺伝子に刻まれた進化の中で培われた情報と、誕生してからの様々な経験に基づく情報を基に瞬時に反射的に情動と言う自分にとっての価値判断をしています。たとえば、親しみと言う情感も扁桃体で作られます。通常人は母親の顔を見ると親しみを感じるものですが、扁桃体の働きが失われた人は、母親の顔の認識は出来ますが、親しみを感じる事が出来なくなる為に、この人は母親の顔をした偽物だと言う妄想が起きてしまう、カプラグシンドロームと言われる症状になってしまいます。

 

 恐怖や不安の場合には、例えば、蛇が目の前に現れると、人は瞬時に扁桃体が反応して、危険と不安と言う情動が生じて警戒したり避けたりします。しかし、時間を掛けてよく見ると、それが作り物であったりした場合には、大脳の前頭葉と言う、ゆっくりとよく考えて結論を出す意識の座が働いて、安全である事を扁桃体に伝え、扁桃体の活動を抑制して恐怖と不安な気分が解消されます。

 

 この扁桃体が過度のストレスに晒されて、それが長期に亘った場合には、扁桃体の過活動が生じてコントロール出来なくなり、不安感が過剰に持続してしまう状態になってしまいます。その為に、扁桃体の下で脳機能を全体的にコントロールしている、ノルアドレナリン神経系やセロトニン神経系、ドーパミン神経系に機能低下が起こり、楽しい事があっても、楽しさも喜びも感じられなくなったり、何事にもやる気が出なくなったり、精神の不安定感等も感じる様になってしまいます。また、それによる不安感が扁桃体の過活動を刺激してしまうと言う悪循環が起きてくる状態になります。

 

 この様な状態に至ったうつが、病的なうつ状態です。この状態になりますと、自分が抱える問題を解決したとしても、不安感は消えず、自分にとって、通常では良い事や楽しい出来事があっても楽しく感じられず、通常なら何でも無い様な少しの問題でも大きなストレスと感じられて、いつも不安と抑うつ状態に苦しむ状態になります。病的なうつであるうつ病は、このレベルに至ったうつの事を言うべきと私は提案したいと考えています。

 

 実際には、どこからが普通に落ち込んだり悩んだりしているだけなのか、扁桃体の過活動がコントロール不能になって精神に異常な不安感を感じる本当のうつ病になってしまったのか、の線引きを中々他人が判断する事は難しいのですが、本当のうつ病になった経験のある人であれば、ただ単に悩んで苦しんでいる時と、うつ病になり、なんとも言いようのない不安感と精神の不安定感の苦しさの差を実感出来る筈ですから、どの時点から自分がうつ病に至ったかについては、ある程度は本人が一番分かっているものです。

 

うつ病に対する薬の効果は?

 

 この様なうつ病の場合には、薬による手助けも必要な場合もあります。過度な不安感に対しては神経の働きを抑制させるベンゾジアゼピン系の抗不安薬、気分の過度な落ち込みに対しては神経を興奮させるセロトニンの働きを高めるSSRIや、セロトニンとノルアドレナリンの働きを高めるSNRI等の薬も有ります。しかし、これらの薬でうつ病は治癒する訳ではありませんし、これら単純な化学物質は、いくらかうつの症状を和らげる程度の効果しかないものです。そうとは言え、本当に重い症状のうつ病の場合、ほんの僅かな症状の緩和でも患者にとっては唯一の救いである事も事実です。

 

 しかし、うつ病に対する薬物療法は、患者にとっては、副作用や薬物依存性等もあり、うつ病治療の中心とするべき治療法ではありません。

 

 うつ病の治療は正常で健康的な心の働きを如何に取り戻すか、もしくは作り上げるかに掛かっています。薬はあまりにも症状が重い時に、薬物依存にならない期間で、一時的に用いるべきです。治療の中心は人間の心を作り出す複雑な脳神経のプロセスに如何に良い影響を与えられるかに掛かっています。

 

うつ病は五感を利用して治そう

 

 人間の心で意識上に感じられる事は氷山の一画であり、実際には無意識下に様々な情報が作られています。人間の体には聴覚、視覚、味覚、嗅覚、触覚、痛覚等が有りますが、それらを通じて様々な自分を取り巻く情報が脳に伝えられ、自分が過去に経験して来た蓄えられた記憶と照合し、瞬時に心の状態を無意識下に作り出していきます。

 

 うつ病と言う扁桃体の過活動を伴う脳の病的な状態を治すには、意識上の心に働きかけるカウンセリング等の心理的アプローチだけでは無く、無意識下の情動意識を作り出す五感すべてにアプローチする方策を講じる事がより効果を上げる方法です。

 

 聴覚の場合には、言葉が一番大きな影響を与えます。思いやりあるやさしい言葉は安心感を生み出しますし、やさしい励ましや賞賛の言葉はやる気を生み出します。単純な音でさえも、大きな音や不快な音は不安感を生じさせ、心地よい音は安心感を生じさせます。好きな音楽は心地良いだけではなく、人によっては人生に対するやる気や希望さえ生じさせる事もあります。

 

 視覚の場合には、単純な色によっても心は影響を受け、一般的に赤色は精神を興奮させ、青色は沈静化させ、灰色や黒は不安を引き起こします。自然の美しい風景は心にリラックスと安定をもたらし、無機質な人工物や雑然とした人工物の中ではリラックス感は生じにくいものです。危険な動物を見れば不安を感じて、可愛い赤ちゃん動物を見れば慈しみと安心感を得られます。天気の良い日の屋外の強い光は自然と気分を爽快にさせますが、その時、脳内ではうつ病の改善につながるセロトニンの分泌が光に反応して高くなっています。セロトニンの分泌は光の強さに反応する事が分っていますので、北欧の国で冬季に日照不足が原因のうつ病が起こる事が分っています。

 

 嗅覚の場合は、人が持つ感覚知覚の殆どは視床を経由し、多少遠回りして脳の様々な部位に運ばれ認識されますが、嗅覚だけは唯一視床を経由しないでダイレクトに脳の情動回路に入ります。嗅覚は人間に至る生物進化の過程で、最も初期の単細胞生物であった頃から、生命が生きて行く為の最重要な感覚であった事が分っています。

 

 単細胞生物は、細胞膜上にある多種類の化学物質受容体によって外界を認知して行動を起こしています。自分にとって栄養となる物質と認知すれば、その物質の多い方へ移動し、危険な物質であれば、出来るだけ避ける方向へ移動します。この意味において化学物質受容体は、外界を認知して情動を引き起こし、それに伴った行動を引き起こす、生命の初期に現れた感覚で最も重要な生きる為の仕組みであったと言えます。

 

 嗅覚は化学物質受容体その物であり、様々な低分子の化学物質が、嗅細胞の化学物質受容体に結合する事によって刺激が起こり、嗅神経を経由して情動を引き起こす大脳辺縁系にダイレクトに送られて、色々な情動を瞬時に引き起こします。心地良い香りは安心感と幸福感をもたらし、嫌いな匂いは不安感や恐怖感を起こさせる事さえ有ります。

 

 味覚は嗅覚と共に食べ物の認識に関与し、体にとって安全な物か危険な物かを判断しますが、美味しい食べ物は安心と幸福感をもたらし、苦みは基本的に毒物を認識させて、情動としては恐怖や不安を引き起こします。

 

 体性感覚の痛覚と触覚の場合には、体の痛みや不快感は痛覚神経によって脳に伝えられて不安感を引き起こします。触覚は他者との触れ合いが大切で、上手く刺激する事により、心地よさと安心感を引き起こす事が出来ます。

 

 これらの様々な感覚を上手くコントロールする事により、無意識下で作られる不安感を取り除き、心の状態に良い影響を与える事が出来るのです。

 

 うつ病は不安、恐怖、悩み、苦しみ等のストレスが強く長く続き過ぎた為に、脳の適応力の限界を超えて、扁桃体の過活動が収まらなくなった時に発症して来ますから、脳が認知できる感覚全てを無意識下で安心感を生じるようにする事で、より効率的に扁桃体の過活動を鎮静化させる事が出来れば、うつ病を早期に改善させる事が出来ます。しかし、うつ病を発症している時は、ストレスに晒されてうつ状態になってから、脳神経が異常を起こすまでにかなりの時間が掛かっていますので、病的脳神経が改善されるまでは、焦らずにある程度の時間は掛かる物だと承知して治療を行った方が良いでしょう。

 

具体的にうつ病に対処する方法

 

うつ病に至った問題があるとすれば、その問題を解決する事はまず第一ですが、その上で心と体を治して行きましょう。

 

五感が心に与える影響を良くするように環境を整える

 

 視覚から良い影響を与えるには、外に出て太陽の光を十分浴びる事が第一です。薄暗く狭い室内空間から太陽の光が降り注ぐ広い屋外空間に出ると、それだけで心が晴れやかに成り、気分が良くなるものですが、その時、脳内ではうつ病で低下するセロトニンの分泌が高まっているのです。また、景色が与える心理的効果も考えれば、雄大な美しい自然の中でのウォーキングや好きなスポーツはさらにセロトニンの分泌を高めてくれます。必ずしも大自然ではなくともいいのです。近くの公園で歩くだけでも土や植物は心を癒してくれますから積極的に利用する様にしましょう。

 

 嗅覚はダイレクトに気分情動に影響を与えますから積極的に利用しましょう、アロマセラピーの研究では、うつ症状には柑橘系の香りや、ゼラニウム、クラリセージ、ローズ等が効果的な事が分っています。しかし、それ以外にも、その人の過去の様々な体験とその時の香りは結びついていますから、その人にとっての心地よい香りはそれぞれ個別的な物でもあります。その意味では、実際に香りを嗅いでみて心地良いと感じられる物を使うのが一番良いでしょう。また嗅覚には、慣れの現象もありますから、時々別な香りに変えて新鮮味を感じる事も効果を上げるはずです。

 

 聴覚も心に影響を与えますから、自分を取り巻く音の環境もリラックス出来る物に変えて行きましょう。音楽の好きな人でも大きな音量は生理的に緊張を引き起こしますから、静かな音量で、美しい情景や心が癒される感覚を持てる様な音楽が良いでしょう。

 

 体の様々な痛みや不快感は、それ自体が心理的にも大きなストレスとなりますから、うつ病を治す為にも、身体的な不快感を引き起こす病気を治す事は、重要な必要性があります。

 

 内科的症状は、病院による治療が必要な物も有りますが、肩こり、腰痛、頭痛、めまい、耳鳴り、体が重だるい等の不定愁訴は、体の筋肉のコリや緊張をほぐして、血液やリンパ液の循環を促進させて回復させて行くマッサージや整体治療が良いでしょう。

 

 特にマッサージの効果は体液の循環を促進し、体が軽くなるだけではなく、施術者の手による心地良い刺激が触覚に伝わり、触覚刺激による大きな心理的効果も得られます。触覚刺激が何故良いかと言いますと、基本的に生物は、一個体で居るよりも、ある程度の集団で触れ合い暮らしている方が安全で安心感を得られると言う集団欲と言うものがあり、他者と触れ合う触覚刺激は集団欲を満たしてくれる大きな要素だからです。集団で居た方が外敵から襲われる事が減りますし、襲われた場合も生存率があがります。食料も自分が調達出来ない時でも周りからもらう事が出来て、餓死する危険性も減らす事が出来ます。これらにより生存率は大幅にアップします。細菌のレベルでもこの法則は一緒で、細菌と言えども集団で接触しあい助け合う事で生存率を上げています。

 

 人の場合も、他人と握手したり、手で触れられたり、ハグされたりする事で、触覚刺激を通じて集団欲が満たされて、安心感、心地よさ、信頼感等がうまれ、うつ病にも大きな効果を与えます。脳科学的にも他者との肌と肌の触れ合いは、オキシトシンと言うホルモンの分泌を高める事が分っており、このホルモンは愛情やお互いの信頼感を作り出し、うつに対しても心理的な不安感を改善させる効果が高い事も証明されています。

 

 マッサージは、体の不快感や痛みと不定愁訴等の体のストレスを改善する事と、手による心地良い刺激でオキシトシンの分泌を高める二つの効果を同時に上げられます。その意味では、うつ病治療に、ぜひ用いたい治療法の一つです。

 

 運動は、脳機能の改善に大きな力を発揮します。多くの研究者が脳機能に及ぼす運動の効果を証明しており、脳機能障害による様々な症状に対して運動は体を害しない程度であれば、やればやっただけ脳機能が改善される事が分っています。うつ病は過度なストレスと不安感から起こる脳機能の低下ですが、うつ病との関係もよく研究されており、効果が大きい事も確かめられています。

 

 明るい日差しの中でのウォーキング、ジョギング、水泳等はうつ病治療に於いて、脳神経の再生、活性化とセロトニン分泌の活性化をもたらし、効果も大きいです。その意味ではうつ病を治す為に日々の運動は必須とも言えます。毎日30分以上は取り組む様にしましょう。

 

 これら五感の働きを上手くコントロールする事で、無意識下の体から来る五感の情報を安心で快適な物にして行く事が出来ます。下等な動物であれば原始的な無意識下の脳の働きだけですから、これだけでうつ病は十分治る筈です。しかし、大脳前頭葉の発達した高等な人間の場合には、人間関係や仕事、金銭関係等、様々な社会的ストレスが原因でうつ病になる事が多く、この社会的ストレスを如何に解消できるかが大きなポイントになります。

 

 社会的ストレスは、ヒトの高度に発達した前頭葉で引き起こされるもので、意識して物事を考える力があるからこそ引き起こされるストレスです。一般的にうつ病になる人は一つの事に執着したり、同じ出来事でも解釈がついついネガティブになりがちな性格要因があったりします。

 

心理的ストレスを無くす方法

 

 うつ病を治すには、自分の抱えるストレスとなる問題を解決する事が出来れば一番いいのですが、必ずしも簡単に解決できる問題ばかりではないでしょう。逆に、うつ病になったと言う事は、解決の難しい問題に長期間悩んでいたとも言えます。しかし、ストレスになる問題が必ずしも解決されなくても、心のストレスを軽くする事は可能です。それが認知行動療法です。

 

 認知行動療法がうまくいけば、自分に何かの問題が起きた時に、起きた事実は一緒でも、心に与える影響は全く違った物にする事が出来ます。その方法をしっかり学び、自分に降り掛かる様々な問題に対するとらえ方考え方、対処の仕方をポジティブなものにして行く事が出来れば、心の負担を和らげてうつ病治療の大きな力となります。

 

 認知行動療法に於いて、カウンセラーの能力は効果に大きな差を生む事は避けられません。マニュアル道理の問題を抱えた患者さんだけが来てくれれば良いのですが、患者さんはどの様な家庭で生まれて、どの様な仕事をし、どの様な人生を歩んで来たのか、個性も性格も抱えている問題も千差万別で一人一人違いますから、マニュアルの様には行かないものです。全ての患者さんに的確なアドバイスを与える事は難しい事ですが、カウンセラーには自身が人生経験豊富で、様々な悩み苦しみを経験し乗り越えて来た人が、一番相応しいのでは無いかと考えられます。

 

 うつ病の患者さんにとっては身近に良いカウンセラーがいてくれれば一番良いのですが、それが得られない人の為に、基本的なうつ病を克服する為に役立つ、心をポジティブに保ち不安感を和らげる考え方を紹介します。極論に思える様な話もあるとは思いますが、人間は、長い年月を掛けて培って来た自分自身の心の傾向をそう簡単には変えられない生き物ですから、心の傾向を変える為には、より根源的な物事に対する考え方を変える必要がありますのでご了承ください。


自分に起こる事全てをポジティブに考えましょう

 

 人間は前頭葉の発達により様々な事を考え過ぎる為に、多くのストレスを抱える事になってしまいました。しかし、その前頭葉があるおかげで、自分自身を客観視する事が出来、自分自身の行動を意識的に変えていく事が出来る様になった唯一の生物です。

 

 人間は日々前向きに努力さえ続けて行く事が出来れば、物事に対する向き合い方や考え方をポジティブに変えて行く事が出来ます。考え方が変われば行動が変わって来ます。行動がポジティブに変えられれば、周りに与える影響も変わり、その人の運命さえも変化させ、人生を幸多き物にして行く事も出来ます。

 

 人は様々な事で不安を感じます。多くの不安の一つは、将来の事が人には分らない為に、ついつい悪い事が起きてしまうのではないかと言う予期不安です。この不安は多くの人が抱きがちな事だと思いますが、この不安程無意味な物はありません。明日の事は誰にも分らないのです。

 

 実際に宇宙で起きている出来事は、全ての事が様々な物が相互作用しながらランダムに起きている事なのです。つまり、誰にも明日の事は確定が出来ないと言う事です。自分にとって良い事も悪い事もどちらが起こるかは誰にも分らない訳ですから、悪い事を考える事自体が無駄なエネルギー消費だと言う事です。無駄なエネルギー消費したくない人は、明日は明日の風が吹く、と考える事は止めてさっさと眠りにつく事です。

 

 それでもなお明日の運命を考えたい人は、どうせエネルギーを使うならば有効なエネルギー消費をする様にしましょう。明日の運命はどんなに考えても分かる事も無いし決められませんから、明日は良い事があると決めてしまいましょう。そう思えなくとも努力してエネルギーを沢山使って良い事が起こると念じましょう。この思考を日々脳に染み込ませませれば、なんとなくでも明日はいい日になりそうだと感じられて来ます。

 

 明日に起こる事は分らなくても、明日自分がどう生きるかだけは100%決める事が出来ます。明日自分のやるべき仕事をしっかりやりきる事、全てに感謝して生活する事、人助けをして人に喜ばれる事をする事、人間としての人格の向上に日々務める事、この事を一生懸命に考えて眠りにつきましょう。明日は必ず良い日に成る筈です。

 

 それでも何かの問題が起こる事も有るでしょう。起きても良いのです。何が有っても自分自身がいつでもポジティブに、しっかり対処して行く気持ちが揺るがなければ不幸にはなりません。幸か不幸かは起きた事実では無いのです。自分自身が物事に対してネガティブに考えるかポジティブに考えるかの気持ちの持ち様で決まるからです。全ての出来事にポジティブな考えを持つ事が出来ればいつも不安なく幸せな気持ちでいる事が出来ます。また、何か問題が有ったとしてもより速やかな解決にもつながります。

 

 せっかくの大切な考えるエネルギーを使うならば、全て無駄なく自分の幸せに繋がるように使って行きましょう。それは自分の為だけのものではありません。本当に自分の為になる事は人の為にもなる事です。自分と周りの人々を幸せにする考えと行動のみが、本当の意味での崩れない幸せをあなたに与えるのです。

 

出来るだけ体を動かしましょう、ポジティブな行動を日々心がけましょう

 

 うつ病になると、動く気力が弱り行動力も衰えて、家の中で一日中過ごしている人も多くいます。また、うつ病治療に当たる先生方も、無理をさせてはいけない、頑張れと言う言葉は禁句とか、動きたくなければ動かなくても良いと指導している事が、当然のようになされています。

 

 私は、この従来のうつ病治療の、頑張らなくていい、無理しない、動かなくていい、と言う消極的な考え方は間違っている部分が多いと考えています。

 

 様々なうつ病の方の状態を見ても、薬を沢山もらって毎日飲み続けて、副作用にも侵されて、家で体を動かす事も無く生活している人は、うつが治るどころか、ますます深みにはまって、うつ病から抜け出せなくなってしまっている人が多いのも実態です。

 

 うつ病の人は、常時不安感にさいなまれて、自分がうつ病に至った問題や日々の軽い問題でも全てが過剰にストレスと感じられて、心の中はストレスと絶えず戦い続けていますから、他に気を配る余裕も無くなり、他人から見ればボーっとしている様に見える事が多いのですが、心はへとへとに疲れ切っているものです。

 

 しかし、うつ病は体の病気ではありません。心の病気なのです。心の病気はじっとしていて治る事はありません。むしろ、うつ病の患者さんは、体は動かさなくても、心は問題である事を考え続けていますから、体を動かさない事で、かえって気分転換が出来ずにストレス感が強まる事が多いのです。昔から、頭を使う仕事をしている人は、休日には好きなスポーツ等で積極的に体を動かした方が、一日寝て過ごすよりも頭の疲れが取れる事はよく言われて来た事です。

 

 うつ病の場合も、基本的には頭の疲れからくる病気ですから、例外ではありません。薬よりも運動がうつ病に効果がある事は、脳科学の研究からも証明されています。運動を毎日する事により、BDNF(脳由来神経栄養因子)、IGFs (インスリン様成長因子)、VGEF(血管内皮成長因子)、FGF−2(繊維芽細胞成長因子)等のホルモンが脳や筋肉で活発に作られてうつ病によって弱ってしまった神経細胞や神経回路を再生させる事が分っています。

 

家族の方に

 

 運動が、うつ病の治療に於いて、様々な薬以上の効果がある事も多くの研究で証明されていますが、家族がうつ病の患者さんに対して運動の強制はしないで下さい。うつ病の人は心理的に不安で心の中の葛藤でへとへとに疲れています。本人が運動の効果をしっかり理解するまで待っていてください。

 

 家族の方は明るく優しく接して下さい、本人の前ではいつもポジティブな言葉を投げかけて下さい。人の脳にはミラーニューロンと言うものがあり、見た物に反応して同じような気持ちを生じさせる働きが有ります。ポジティブな言葉に多く接していると、やがて心がいつもポジティブになって来るものです。

 

 声を掛けてあげるとしたら、尻を叩くような「頑張れ」はダメです。本人はすでに心の葛藤で頑張り続けているのです。声を掛けるならば、少しでも本人の努力を認めてあげて、やさしく「頑張ってるね」です。ポジティブな行動が出来ていない時には優しく「応援しているから一緒に頑張ろうね」です。

 

うつ病を何とか改善しようと思っている方に

 

 これを読まれている方が、うつ病の方でしたら、ぜひ運動療法を実行してみて下さい。

 

 うつ病を改善するには、運動しかないと言ってもいい程の研究結果が多くの研究者から出されているのです。うつ病だから運動する気力が出ないと言う人もいると思います。本当にそうでしょうか。多くのうつ病の患者さんは、少しでも早くうつ病の苦しみから救われたいと願っている筈ですから、運動療法が効果的と分ればすぐにでも行動すると思います。もし行動を起こせない方がいるとすれば、薬を飲み過ぎていて心に異常が起きて来ている場合、うつ病と言われながらも実はそれ程辛い症状では無い場合、元々運動の習慣が無い場合があると思います。

 

 元々運動習慣が無かった人の場合は特に運動療法はぜひ実行した方が良いのです。この場合にはうつ病で行動力が無くなったと言うよりも、長年の運動不足の生活習慣がただ単に続いているだけの事も多いからです。また、運動不足自体がうつ病を引き起こす大きな原因にもなるからです。この様なうつ病の人は病気を治すだけでは無く、人生を有意義な物にする為にも、必要とあれば、運動や行動を素早く起こせる様に考え方を変えてゆく必要があります。

 

 考え方を変えれば、行動が変わり、行動が変われば、生活習慣が変わり、生活習慣が変われば、人生そのものが変わります。

 

 行動しなければ、何も変える事は出来ません。うつ病を少しでも早く治したいとあなたが願っているのでしたら、まず、一歩を踏み出してください。難しい事は一つもありません。ただ、外に出て深呼吸し、太陽の光を浴びながら、歩き出せばいいのです。

 

 仕事がある人は時間の制約があっても一日トータルで30分は歩くようにしましょう。仕事が現在出来ないでいる人はトータルで一日1時間以上は歩くようにしましょう。

 

 ただ単に歩くと言う事だけでも、脳にとっては能動的な行為であり、やりがいや達成感、充実感が得られるものです。その時、脳では本人が意識出来なくても、確実にうつ病回復のプロセスが始まっているのです。

 

良い行動を実行しましょう

 

 心の不安を取り除き安定化させる為には、周りの人の為になる良い行動が必要です。人間は他人の良い行いを見ると、なんとなくその人に好感を抱いたり、暖かい気持ちになったり安心感を得たりしますし、逆に、悪い行動に対しては、嫌悪感や不安感を感じる様に出来ています。

 

 人間は自分自身を客観的に見る意識の働きが、前頭葉の発達と共に高度な発達をした生物です。他人の良い行動を見るだけで心が満たされるだけでは無く、自分自身が良い行いをした場合にも、自分を客観視する意識が自分自身に対する評価を高めて、自分の心に好感や温かさや安心感と自信を生み出してくれます。この感覚はうつ病の改善にとって非常に大切な物です。

 

 家族の為、他人の為になる事をいつも考え少しでも行動を起こしましょう。自分自身が心から善だと思える行動は、あなたの心にも最善の栄養となり、うつ病だけでは無く人生にも良い影響をもたらす事になります。

 

 そうは言っても、今現在うつ病に苦しんでいる方は中々今までの自分とは違う行動を起こす事は難しいかもしれません。しかし、頑張って自分の殻を破って善成る事を行ってみて下さい。その瞬間に心が軽くなる事が実感できる筈です。

 

 うつ病に陥ってやる気が出なくなったと言って、家族に負担を掛けて自分は薬だけ飲んで休んでいるだけと言う人がいますが、この様な対処の仕方が一番うつ病から抜け出せないやり方です。この様な生活ではいつまで経っても自分自身に対する自身の評価も悪いものとなり、その事が生きる自信の低下と不安に繋がり悪循環に至ってしまいます。

 

 人間はどんなに辛くても苦しくても、自分自身が納得できる良い行動を行っていった方が良いのです。良い行動を行って苦しくなって死ぬ人はいません。良い行動を行っているその瞬間に脳は癒されているのです。必要な行動をしっかりやり続ける事により周りとの生活も上手く行きますし、自分に対する自己評価も満足の行くものとなり、不安感の解消にも繋がりうつ病からの回復も促進できます。

 

 うつ病はじっとして動かなくて良くなる病気ではありません。自分の人生を見直し改善し、より良いこれからの人生を歩む為の心の準備と変革を促す病気です。治療は日々感謝の精神、必要な行動、良い行動は速やかに実行する、運動は毎日行い体を積極的に動かす習慣を身に着ける、これらの生き方の変革が出来た時に、日々の生活に安心と充実感が生まれ、来るべき未来に明るい希望を持つ事が出来る様になり、うつ病からの真の回復を実現する事が出来るのです。

 

 これまで述べたうつ病治療の方法、五感に認知される情報を出来るだけ心地良いものにする、運動する、良い行動をする、これらの事はすべて脳に良い影響を与え続ける為の方法です。しかし、一度うつ病まで陥った脳はすぐに治る物では有りません。日々の積み重ねが大切です。半年、一年、二年と掛かる人もいると思います。成果をあせらず諦めず取り組んで下さい。努力は決して無駄にはなりません。全ての生命の根本原理は自己治癒力です。脳も体も適切な条件さえ整えば時間が掛かっても必ず回復出来る様に出来ているのです。



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